Trans Eurasien Expreß seit 2002

 
erscheint i.d.R. vierteljährlich und behandelt bedeutende und/oder interessante Eisenbahnen und sonstige Transportmittel in der Welt, mit Vergleichen zwischen Japan und dem Ausland, Geschichts- und Kulturvergleichen - je nach Thema der Ausgabe. Alle Fotos, Ton- und Videoaufnahmen wurden vom Author selbst aufgenommen, soweit keine fremde Quelle ausdrücklich vermerkt ist.

Mikio Tanaka

 
     
   


 
45. 水上交通の美 【ベニス編】

- 東西の水都、浮かぶ美の競演 Ⅰ -

Die navigierende Kunst I – faszinierende Transportmittel in Venedig
今回の取材地: イタリア イギリス


水上交通の美のイタリア的表現方法
"Ferro di prua" (Vordersteven) am Bug oder der "Delfin" schützen
den Schiffsrumpf und dienen gleichzeitig als Ausgleicher.

ようやく完読した「坂の上の雲」に感動してロシアないしバルト海物が3号続いてしまったが、今号はぐっと南に下ってアドリア海、次号は更に下ってタイ王国はチャオプラヤ川の支流からお届けする。尚、本連載は欧州の鉄道に軸足を置きつつも、足の遅速を問わず欧亜を中心とした世界各地の面白い各種乗物を広く取り上げつつあるので、旧題「欧州鉄道百景」を改め、今号より「準急ユーラシア」と題する事にした。

 
1 ゴンドラの美
 

ベニスの乗物と言えばまずゴンドラだ。たゆたいつつ水都に花を添える芸術的な乗物に焦
点を当てる。



ドルフィンが水面の反射に輝きながら上下に揺れる。規則正しく耳朶を打つ水音が快い。
Das Design des Delfins symbolisiert Venedig als Ganzes und setzt sich
zusammen aus dem Hut des Dogen, der Rialtobrücke, den 6 Gemeinden,
3 Nebeninseln, der Insel Giudecca und dem Canal Grande.
↑ 200~300艘あるというゴンドラは今日ではほぼ観光目的に特化しているが、船体が黒一色なので、銀色に輝く前後の装飾が引き立つ。Ferro di prua(舳(へさき)の鉄)という船首の装飾(船首保護兼バランサーの機能もある由)はその形状からDolfin(イルカ)とも呼ばれる。日本人の目にはむしろ出刃包丁に見えるが、イルカが上に向かってジャンプしている姿に見えなくもない。


宿の親父の説明によると、頂上の部分は Doge (かつてのベニス総督) の帽子、その下部のアーチはリアルト橋、前方向の6本の櫛状の板はベニス本島の6区、その間に挟まれた小さな装飾 (省略されているものもある) はムラーノ等の周辺3島、後方の一本はジュデッカ島、縦方向のS字湾曲は大運河を表わすという。



左上:船体が反り返ったゴンドラ達が一様に鎌首をもたげて進む様子は動物的ですら
ある。右上::動力船も頻繁に行き交うので、築400 年超のリアルト橋のアーチの天井は
煤煙で汚れている。左下:水を切って進むピアノブラックの船体に、水面の輝きが反射する。
Durch den nach hinten gebogenen Schiffsrumpf wirken die Gondeln fast
animalisch, wie sie alle gleichzeitig den Kopf hebend auf dem Kanal entlang gleiten.
↑ ゴンドラのデザインは統一されているが、一定の範囲内で独自性を出す事は認められているようだ。ドルフィンもそうで、良く観察すると「3島」の有無、イニシャルや家紋(上左)の有無、表面が艶消しダル仕上げか鏡面に近いつや仕上げか、等のバリエーションが見られるが、Doge部分や「6区」等の基幹部分の逸脱は許されないようだ。【左中】ロンドンの街角で見かけたイタ飯屋の看板に描かれたドルフィン。特色は良く捉えているが「6区」のシンボルが1本足りない。


接水面積ひいては水抵抗最小化の為、船体は細長く(長さ11.5m、幅1.4m)湾曲している。
Links oben: Typisch Vendig - Ein Einbahnstraßenschild auf der Wasserstraße
↑ 【上左】小さな運河に道路と同じ「一方通行 Senso Unico」の標識があるのも、また聖母マリアの彫刻の下に2艘のゴンドラの絵が彫り込まれているのも、船が生活の一部になっている水都らしい。【下】水上をすいすい走り回るゴンドラが、陸に上がって身動きが取れない様子はどこか気の毒だ。同じ人間でも不調の時は魅力が感じられないのと同様、台木で固定されたゴンドラは美しくない。


ベニスはその名を冠した照明(左下)やブラインドがあるように、歴史的に文化の発信
地だった。今日のベニスは観光で生き、島全体がテーマパークのようだ。店も観光客
相手が大半で、例えば八百屋はどこにあるのか、生活臭が殆ど感じられない。
↓ 1557年(日本では木下藤吉郎が織田信長の草履取をしていた頃だ)にデザインが一般公募され、かのミケランジェロ案を抑えた二重構造デザイン(右上、搭乗機から偶然撮影)が採用されたリアルト橋Ponte di Rialtoは1591年(藤吉郎転じて豊臣秀吉が太閤になった年だ)に完成し、その美しさからベニスのシンボルとなり夜中まで無数の観光客と船でごった返す。しかし早朝は閑散として出番前のゴンドラの放列は行き交う船が起こす波で揺られる事もなく、艫(とも)を揃えて静まり返っている。遠目には銀色のシッポにしか見えない艫飾りは、実はこんなに美しい(左下)


Nur früh am Morgen ist es auch auf der sonst tag- und nacht
belebten Rialtobrücke still. Auch wenn das Heck der Gondeln
dezenter als der Bug wirkt, ist es nichtsdestotrotz künstlich.
↓ ゴンドリエッレ(漕ぎ手、女性はゴンドリエッラ)3題。【左上】オール留めforcolaは複雑な形をしており、オールの当て方によって速度や向きを調節する。【右上】この運河の手前に有名な嘆きの橋 Ponte dei Sospiri がある。英国ケンブリッジ大学の St. John’s College にも同じ名前 Bridge of Sigh の美しい橋がケム川 River Cam にかかっている。ケム川もボート遊びが盛んだが、水深の浅いケム川では櫂で川底をコンと押しながら推進する(puntingといい、多くの学生が乗れるよう平底構造になっている)のに対して、水深が深いベニスでは水を掻くしかないので乗客定員も少なく、船体をスリムにし船首と船尾を反り上げて水の抵抗を減らす工夫がなされている。


下:大運河+リアルト橋+ゴンドラとベタな絵葉書的な構図だが、長い船
体を旋回させながら漕ぎ出していく様子が格好良くてつい撮ってしまった。
Egal was und wie man fotografiert...in Venedig wirkt alles malerisch.
↓ ゆったりした客席は写真の黄色の他にも赤や青等、鮮やかな色が用いられる。船体が細い為に両側の水が極めて近く、風と水を感じながらの遊覧は快適だ。値段も上等だが、需要と供給がこの辺りでバランスが取れているのだろう。客席の前方にはワンポイントの金属飾りか花が文字通り花を添える。船体がピアノのような上質な深い黒と銀飾りの組み合わせというシックな配色なので、客席と花の鮮やかさが引き立つ。さすがイタルデザインの国だ。


Ein betörender Kontrast: der klavierschwarze Schiffsrumpf
und die prachtvollen Delfine, Blumen und Passagierplätze
2 動力船
 
↓ ベニスが現在のように半水没していなければ、この大運河Canal Grandeは並木道の中央を路面電車が走っていただろう。その路面電車の役割を担っているのが乗合船ヴァポレットVaporettoだ。英語のvapor(蒸気-勿論現在では蒸気運転ではなくディーゼルエンジンだが) から推測して「ポンポン船」的な意味合いか。乗・下船に際して改札は無く、大陸欧州の鉄道やバスの信用乗車方式がここでも採用されている。ヴァポレット・アリラグーナ・ゴンドラが入り乱れる大運河両岸の歴史的建造物を波の浸食から防ぐ為に速度規制が敷かれており、動力船は船着場での発進・後退時以外はアイドリング状態で徐行するので、「ヒュイヒュイヒュイ・・・」という気の抜けたような回転音しか聞こえないが、一旦大運河を抜けて広い潟に出ると、ブロロロ!とエンジン全開で水を得た魚のように突っ走る。


ヴァポレットは混むので早朝がお勧めだ。右上の二葉はリアルトに停船中の 1号線リド行。この1号線
は映画「ベニスに死す」に何度か登場し、終盤の航行シーンは死地に戻る象徴的役割を果たした。空撮
写真右下の港が1号線の終着リド港、そこから細長いリド島を横断した反対側の大きな宿がデ・バンだ。
Die Insel Lido (links) – Schauplatz von "Tod in Venedig" und Vaporetto Linie 1 Richtung Lido (rechts)
↑ 【左】1号線の終点リドLidoは細長い島で、船着場近くのホテル・デ・バンGrand Hotel Des Bains(写真左上の左下隅の赤屋根の建物、2010年に惜しくも閉館)は映画「ベニスに死すDeath in Venice」の舞台になった。今でもベニスといえばこの映画で繰り返し流れたマーラーの5番のアダージェットと呼ばれる楽章の美しくも気だるい旋律が脳裏に流れる。現実のホテル・デ・バンは、冴えないアッシェンバッハ教授も美少年タッジオも貴族趣味的調度品溢れるロビーも無い、普通の高級リゾートホテルだった。これらは皆ヴィスコンティ監督の演出の賜物だが、彼自身が貴族階級出身でかかる演出が得意だった点については第22話24話35話参照。


Taxi (links oben), Postboot (rechts oben), Polizei (links mitte), Krankenboot (rechts
mitte) und Feuerwehr (links unten). Um die Ufergebäude vor der Erosion zu
schützen, kommt man mit dem Vaporetto innerhalb der Insel nur langsam voran.
↑ 水の都ベニスではタクシー・郵便Servizio Postale(背後の水に面したアーチはベニス郵便局の集配口)・警察Polizia・救急Ambulanza・消防Vigiliも皆船だ。Poliziaの藍色地に白線、 Ambulanza の白地にオレンジ線、それぞれ本土(陸上)の4輪のパトカーや救急車の場合と同じ配色というのも面白い。緊急船は、速度規制が敷かれている大運河内も白波を蹴立ててヴァポレットやゴンドラを右に左に追い抜いて行く。左上:水上タクシー Motoscafi乗場はこの夜は増水して歩道まで水面がせり上がり、波と共にタクシーまで岸に乗り上げかねない勢いだった。右下:高級ホテル(写真はダニエッリDanieli)のハイヤーも、当然船だ。


Das Labyrinth der Altstadt ist durchaus faszinierend, aber auch die plötzliche Sichtserweiterung,
wenn man auf den San Marco-Platz tritt, ist auch beeindruckend.
↑ 狭く薄暗い迷路を彷徨い歩いた後サン・マルコ広場 Piazza San Marco に出ると一転して広大な空間がぱっと開け、水鳥が縦横無尽に飛び回るコントラストが面白い。広場を取り巻くドゥッカーレ宮殿の華麗さは、かつての商人都市国家・ベニスの栄華を偲ばせる。この付近で大運河は尽き、水景も広がり岸からはより広いジュデッカ運河、更にその遠景にはヴェネタ潟が広がる。この大パノラマを借景に ずらりと勢揃いしたゴンドラ達が、波の動きに合わせてラインダンスのように統一してゆらゆら揺れる様子 は、乗物好きの筆者には「おいでおいで」をしているように見えた。


「海の壮麗」号が、朝もやの中をしずしずと「海廊」を横切る。広い潟
に点々と続く、車線代わりの案内灯は水面上数mはあるが、路面の
点字ブロックのようにしか見えない。クルーザが如何に巨大かわかる。
Vor den riesigen Kreuzfahrtschiffen, die sich vor Venedigs
Küste tummeln, wirken die Wasserlampen wie kleine Bohnen
↑ そのサン・マルコ広場が面するジュデッカ運河には、山のようなクルーザーが時に何隻も遊弋する。クルーザーのデッキは、接岸を待ちかねる船客で鈴なりだ。ビルで言えば10階以上の高さの最上階デッキからの水都の眺めは格別だろう。単調なクルーズ(鉄道を深く愛しつつも2時間半を超える移動はつい飛行機に走ってしまうせっかちな筆者には、連日水平線を眺める移動に耐える自信は無い)では寄港は大イベントの筈で、ましてやアドリア海の真珠といわれるベニスの到着はハイライトの一つに違いない。


左下:係留される「海の煌き」号。傍を通るちっぽけなヴァポレットから見上げる
と、白亜の城郭のように威圧的だ。画面左下にサン・マルコ広場が見える。
Wie von einem Wolkenkratzer aus blickt man von den
vor Anker liegenden Kreuzfahrtschiffen auf Venedig.

イタリアでクルーザーと言えば、コスタ・コンコルディアCosta Concordia号の座礁事故が記憶に新しい。2012年1月13日、乗客・乗員約 4000人余が乗ったコ号は、地中海ジリオ港沖で座礁・横転し約30名の犠牲者が出た。コ号には事故の丁度100年前の1912年に北極海で沈没したタイタニック号犠牲者の遺族も乗船しており、また座礁当時コ号のレストランのBGMは映画タイタニックの主題歌My Heart Will Go Onだったという。話が出来過ぎの観もあるが、それよりも日本人的に興味深いのは、多数の乗客を残したままコ号を脱出したというスケッティーノ船長(最高裁まで争ったが過失致死等で禁固16年の刑が確定し収監された)とリヴォルノ港湾監督事務所のデ・ファルコ隊長との交信記録だ。



「ノルウェーの宝石」号が、ジュデッカ Giudecca 運河のS字 カーブを器用に通り
抜ける。町の一部が平行移動しているかのような奇観だ。左下:ベニス空港から離陸
する飛行機から見た大運河とジュデッカ運河。画面右上の空白がサン・マルコ広場だ。
Links oben und mitte: Ein fahrendes Gebäude? Kreuzfahrtschiff
aus dem fernen Norwegen auf dem Kanal Guidecca

「よく聞け、スケッティーノ。自分は助かったと思っているだろうが、このままでは済まないぞ。早く船に戻れ、馬鹿野郎Vada a bordo, cazzo!」との胸のすく叱責でデ・ファルコ隊長は一躍英雄となり、最後のフレーズがプリントされたTシャツまで発売された。船長の回答の曖昧さや矛盾をその場で突いて、びしびし糾明する頭の回転の速さと遁辞を許さぬ厳しさは辣腕検事のようだ。日本でスキャンダルが明るみに出た際、記者会見で曖昧で矛盾する説明に突っ込んだ質問もできない記者達や、責任者達が形だけ頭を下げて見せる儀式的映像に慣らされている身には、とても新鮮だった。イタリアの公務員も秘密保持義務はあるだろうに、それでもこのような国民的関心事の大事故で「内輪」の交信記録が主権者である一般国民に直ちに公開される事に、民主主義の歴史を感じた。

 
3 鉄道・軌道交通
 

ベニスは小さな島にもかかわらず船舶以外の交通情景もユニークで多様だ。簡単にご紹介する。



左下:リベルタ橋とベニス島。右側手前の人工島がトロンケット島で大半が駐車場だ。
Oben: Vom Bf Venezia S.L. sind hinter der Lagune in der Ferne die Dolomiten zu erkennen.
↑ 【左上】ヴェネッツィア・サンタ・ルチーア(以下S.L.)駅からはドロミテの辺りだろうか、南アルプスの峰々がヴェネタ潟の遥か向こうに遠望できる。【左下】本土との間はリベルタ橋Ponte della Libertà (ムッソリーニ時代に建設された同橋は全長4km弱、東京湾アクアラインの木更津側区間のアクアブリッジよりやや短い)で結ばれているが、洋上の同駅は線路容量に限界があり、一部の列車は対岸の本土側にあるヴェネツィア・メステレ駅で折り返す。【右下】ヴェネツィアS.L.駅に面した船乗場の名はフェッロヴィーアFerrovia、「Ferro鉄+via道」は日本語の「鉄道」やドイツ語のEisenbahn(Eisen鉄+Bahn道)と同じ構造だ。


中・下:本土からリベルタ橋を渡ってNTV社の私鉄新幹線・イタロがやって来た。NTVの高速鉄道は仏アルストム
製AGV(TGVが両端機関車方式だったのに対して電車方式を採用)だ。最高時速300キロのこの初代ETR575は
ジウジアーロ・デザインが美しかったが、2代目ETR675はJR東海700系のようなカモノハシ顔になってしまった。
↑ 映画「ベニスに死す」では主人公アッシェンバッハ教授が乗った列車がヴェネツィアS.L.駅に着く前に大海原の中を走るかのような海原電鉄第25話参照)的シーンがある。しかしリベルタ橋は複々線の西隣に4車線の道路橋が並走する巨大構造物なので、車窓間近に海原が見られるのは東端の線路と道路の西端車線のみだ。筆者の知る限り、鉄道線のみが海面間近を延々と走る区間が現在でも残っていのは北海のDBドイツ鉄道Sylt島連絡線と海上トロッコHalligbahn第55話参照)くらいだ。


下:リベルタ橋で離合した二代目イタロの後ろ姿。
Aus dem Flugzeug wirkt Venedig wie ein Fisch, der mit der
Angelschnur (Liberta Brücke) gefangen wurde (links oben).
↑ 左上:ベニス本島を上空から見ると、リベルタ橋という釣り糸で釣り上げられる魚のような形をしている。腸のような逆S字カーブがベニスの大動脈、大運河だ。対流が少ない潟内は淀んでおり、1時間も飛べば澄んだ地中海を気軽に楽しめるようになった今日、上記映画で描かれた海水浴リゾートは成り立たないだろう。右上:航行可能な水路を示す案内灯もこの潟の光景を特徴付ける。中:リベルタ橋を車で渡る最中とベニス本島(なぜか灰色表示になっている)に入った瞬間のナビ画面。白丸印がローマ広場Piazzale Romaのサン・マルコ立体駐車場(同名の広場は島の反対側だ)の辺りで、ここが車で入島できる限界点だ。本島手前の水路(大運河)を隔てた左側はヴェネツィアS.L.駅、手前右側は大駐車場のある人工島トロンケットTronchettoだ。


左下:ローマ広場駅の巻揚機。右下:車体に掲出されたベニスの市紋。
Um der zunehmenden Zahl der Touristen Herr zu werden, wurde nördlich der
Inseln ein Parkplatz eingerichtet, der über eine automatisch betriebene Seilbahn
mit der Anlegestelle Piazzale Roma auf der Hauptinsel verbunden ist.
↑ ベニスに押し寄せる年間約2000万人という膨大な観光客の車はサン・マルコ立体駐車場(左下)にはとても入りきらない。長期滞在型の古き佳きベニス観光の象徴だった前掲ホテル・デ・バン閉館と奇しくも同年の2010年、新時代を象徴するかのような輸送力の大幅改善が2つ行われた。第一はローマ広場~トロンケットⓅ間を単線無人で結ぶ、墺Doppelmayr 社(テムズ川にかかるロープウェイも同社製だ)製People Mover di Veneziaだ。ケーブルカー方式なのでモーター音はなく、中間駅で僚機と交換する。しかしトロンケットⓅの収容能力にも限度があるので、続いてローマ広場と本土・メストレMestreを結ぶトラムも導入された。本土の広大なⓅと島を直結できるうえ、メストレはベニス島勤務者のベッドタウンでもあるので一石二鳥だ。もしこの輸送力も限界に達すれば、もう入島制限を検討せざるを得なくなるだろう。


上:レールが1本しか無い点に注目。下:リベルタ橋で渡海するトラム。
Die Translohr-Straßenbahn mit Reifen und Begleitschiene verbindet Piazzale Roma und Mestre seit 2010.
↑ 仏ロール・アンデュストリー株式会社Lohr Industrie S.A.が開発したTranslohr。編成長が調節可能なモジュール方式は第33話でご紹介した独Siemens社のコンビーノと同じだがユニークなのはその足回りだ。鉄製案内輪2輪が1本の案内軌条をV字型に挟んで進路を固定する。駆動はゴムタイヤなので急坂・急カーブに強く、またレールは1本で済む。反面、タイヤの維持費は鉄輪より高く、また導入例が少ないので将来中古車の処分先が少なく、走れる限り使い潰す入替サイクルになるだろうから、その辺りをどう評価するかだろう。2006年のクレルモン=フェラン(仏)を皮切りに天津・パドヴァ(伊)・パリにも導入された。日本にも実車を持ち込んで売込がなされたが最終更新日(2018年11 月末)現在、導入例は無い。


上:マルコ・ポーロ空港にアプローチするエミレーツ航空のB777。中:この水路
の突きあたりを右折すると空港に至るが、東風の日はこの辺りの頭上を着陸機
が低空で通過する。白と黄色の船が Alilaguna の水上バス。下:終点・空港港。
Die Pendelschiffe der Firma Alilaguna verbinden die Hauptinsel mit dem Flughafen Marco
Polo. Schade ist nur, dass man nicht auf Deck kann, um die schöne Fahrt voll zu genießen
↑ ベニス本島からマルコ・ポーロ空港まではローマ広場から陸路経由のバスも出ているが、当地に来た以上は〆も船だろう。ヴァポレットを運行するActv社*ではなく、アリラグーナAlilaguna社*の水上バスがベニス本島と空港を結ぶ。イタリアを代表する航空会社、アリタリアAlitalia(「イタリアの翼」の意)に伍した社名(「ラグーン(潟)の翼」)の語感とは裏腹に鈍足だが、揺れながら徐々に小さくなって行くベニスの景色を十分堪能できる。船着場が空港ターミナルビルにほぼ直結しているのもベニスらしくて良い。
 
準急ユーラシア、次の停車駅はバンコクだ。
Nächster Halt: Bangkok
Fahrplanmäßige Ankunft: Juli 2013

(2013年4月 / April 2013)
(2018年12月更新 / Letzter Update: Dezember 2018)
 
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